風の通り道を感じること
南極授業が授業であるために35
当たり前のことだが、
風車を風上に向けるとよく回る。
その向きがちょっとずれていると、
とたんによく回らなくなる。
そんなときは、
少しずつ向きを調節して、
一番よく回るところを見つけようとする。
そんなことを繰り返しているうちに、
あることに気づかされる。
風車が一番よく回る所は、
つまり、風が吹いてくる方向は、
いつも、ほとんど同じなのだ。
その風が吹いてくる先に目をやってみる。
すると
そこには南極大陸が広がっていた。
南極大陸から吹き下ろされてくる冷たい空気が
こちら昭和基地に流れ込んできているのだ。
いつも、いつも。
ある自然の法則にしたがって。
「風の通り道」というのがあるとすれば、
それはここなんだ、と感じた。
その風のことを
「カタバ風」
というのだが、
そんなことはどうでもいい。
「カタバ風」という言葉をまず知ることよりも
「そのことを(今、感じたそれを)カタバ風という」ってことの方が
大切なこと。
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もう一つの実験室
南極授業が授業であるために34
この「屋外理科実験室」からは
昭和基地が一望できる。
基地を取り巻くリュツォフォルム湾が白く凍りつき、
太陽の日差しを跳ね返してキラキラ光っているのが見える。
地球の南の果てには、
こんな光景が待っていた。
この高台に登ってくるまでには、
慣れれば10分程度。
リュックに実験道具をつめてここまでやってきて、
そこで万が一、忘れ物に気づいたとしても、
なんとか取りに帰ろうと思える距離感。
軽い運動で体が温まってきているので、
実験中も寒さをさほど感じない。
むしろ、
朝になると常に吹いている南極特有の風が
心地よく感じる日さえある。
ここで、ミニ風力発電機を組み立ててみて
おもしろいことに気づく。”… 続きを読む...
寝る時間が惜しい
南極授業が授業であるために33
光電池で発電した電気で走るおもちゃの電車。
しかも、
南極の太陽で発電した電気で、である。
風力で発電した電気で走るおもちゃの電車。
しかも、
南極の風で発電した電気で、である。
なんだかよくわからないけれど、
こんなどうでもよいようなことにわくわくすることが
実験、なんだと思う。
さっそく、
昭和基地の太陽に
手作りした光電池&コンデンサー蓄電装置を向けてみる。
季節は白夜の夏。
太陽は真夜中も沈まない。
地平線ぎりぎりのところを移動していく。
太陽に向けた太陽光パネルがほぼ直立していることからも
それがわかるだろう。
この真夜中の太陽で、
本当に電気が作れるのか。
作れるとしたら、どのくらいなのか。
ストップウオッチとテスターと
野帳とボールペンと
道具一式と温かい飲み物を持って
自分だけの屋外理科室に行くのが日課だった。
毎日、寝る時間が惜しいと思えるくらい、
この時間が楽しくて仕方がなかった。“… 続きを読む...
れっきとした授業へ
南極授業が授業であるために30
「昭和基地には太陽光パネルがある、
南極には太陽が全く昇らない季節があるのに。」
この矛盾を矛盾でなくそうとして、
子どもたちは動き出す。
例えば。。。
「きっと、太陽があるうちに、
いっぱい電気をつくっておいて
昭和基地のどこかにためておくのかもしれない」
という仮説を抱き始める、とか。
このことを、
子どもの側からもう少し詳しく見てみると
次のようなことが言える。
電気についての学習は小学3年生からで、
まめ電球をつけるとか、
モーターを回すとか、
主に消費に関する活動をする。
また、小学4年生では、
太陽光パネルを扱いながら、
そこで、発電という活動を体験する。
そんな子どもたちが、こんどは
電気をためる、
という新たな概念をもちこんでくるのだ。
そこに、今回は、
コンデンサーを登場させてみることとする。
こうして、
子どもの思考にあった
手作り教材のスケッチを描いて行く。
南極授業が
れっきとした授業となるために。
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南極授業はアウトリーチ活動か
南極授業が授業であるために29
昭和基地に太陽光発電の設備があることは、
いかにも、らしい、ことである。
自然エネルギーを活用したり、
できるだけ環境に負担をかけないようにしたりすることは
極域観測の基本的なスタンスなのだから、
そういうことを世間一般にアウトリーチしていくことは、
意味あることだと思われる。
ただ、
南極授業でそういうことを扱うには、
それだけでは、ちと不十分。
つまり、
それがあまりにも、らしい、ことであるだけに、
子どもにとっての「予定不調和」を引き起こさないのである。
「へえ〜すごいね。やっぱりそうなんだね」
になるのが落ちである。
そこには、
ある仕掛けが必要となってくる。
例えば、
「昭和基地には太陽光パネルがある、
南極には極夜といって太陽が全く昇らない季節があるのに。」
という矛盾が存在しているということだ。
この矛盾の存在が
授業の中で
子どもの本気を引き出すかぎとなる。
わかりやすいアウトリーチ活動だけが目的なら、
こんな矛盾なんかない方が、
いいのだろうけれど。
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太陽発電と風力発電
南極授業が授業であるために28
南極昭和基地のことを調べているうちに
おや?と思うことがいくつかあった。
例えば、
昭和基地には太陽光パネルによる発電設備と
風力による発電設備があるということ。
この2つを比較するだけでも
いくつかの「おや?」が生まれてくるのである。
なぜ、太陽発電と風力発電があるの?
どちらか一つでいいのに。
南極や昭和基地では、
太陽光発電と風力発電のどちらがたくさん発電するの?
折しも、
国内では未曾有の自然災害に見舞われ、
エネルギー問題が大きな課題となっていた。
南極におけるエネルギー問題を考えることは、
未来の地球のエネルギーのあり方にもつながるかもしれない、
そういう思いにも至った。
そこで、ここに迫る授業を構想してみることにした。
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