あれは夢ではなかったのか(20)(vol.147)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの20回目。
(20)宿帳

ややセピア色になった、どこか存在感のある一冊の帳面。
ラングホブデ袋浦にある雪鳥沢観測小屋にずっと備えられてきた宿帳だ。
20年以上も前からこの宿を訪れてきた南極観測隊員たちの
ここで見た自然の様子や、その時の感動、ここに来るまでの決意などが
それぞれの筆致でいきいきと刻まれていた。

不思議なことに、そこに書いてある事実は、
まさに今自分が見ている自然の光景そのものであり、
そこから彼らが感じている感動というのもまた、
まさに今自分が味わっているものそのものだった。

ずっとかわらない自然の中に建つここ雪鳥沢観測小屋の宿帳に、
おそらくこれからもずっとかわらないであろう感動を記したあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

最後のカレーの日(vol.145)

11月末に日本を発ってからは、
毎週金曜日がカレーの日と決まっていた。
あれから16回目のカレーがこれ。
そして、これが54次隊最後のカレーとなる。
毎週金曜日がカレーと決まっているのは
しらせや昭和基地での生活は、
つい曜日があいまいになってしまうから、
というのが通説であるが本当のところは定かではない。

しかし、実際、それはけっこうあたっている。
昭和基地での夏作業では
みんなは曜日に関係なく任務に当たっているからだ。
南極の夏はとても短く、
その間にやるべきミッションがひしめいているうえ、
天候が荒れれば数日は作業ができないこともあるので、
できることは進めておきたいと、みんながんばる。
週末の休日などはもとより、
約10日に1回程度にやってくる「休日日課」という日でさえ、
至る所で作業や、野外行動が実施されているのが夏の昭和基地。

それでも、毎週金曜日にカレーが出ると、
隊員たちは、気持ちだけでも「週末気分」にひたることができる。
そのことが、次への英気を養い、
安全作業につながる心の余裕を生み出してくれた。
毎週金曜日はカレーの日、その理由はやはりちゃんとある。
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あれは夢ではなかったのか(17)(vol.143)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの17回目。
(17)石の楽園

スカルブスネスである山のピークを目指していた私たちは、
突然、目の前に広がったこの自然のいたずらに
思わず釘付けになった。

真っ赤な岩がむきだしになって、ここだけが平に広がっている。
そして、そこに不自然に転がる大小さまざまな石、岩。
行き場を見失って迷子になってしまったようだ。

いつしかここは、石の楽園とか、石の庭園とか、
そう呼ばれるようになったこの光景

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(16)(vol.142)

 もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの16回目。
(16)砂

岩を踏みしめながら登り詰めた頂の上からは、
透き通った池と、大量の砂が見えた。

付近一帯の露岩が少しずつ少しずつ浸食されてできた砂が
ある条件が整って偶然ここにたまってしまったあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(15)(vol.141)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの15回目。
(15)オーロラと南十字

今、しらせはオーロラ帯の下にいる。
オーロラが出ていなくても、
雲がなければ真上には、降ってくるような満点の星。

しらせの上でオーロラと南十字とが
ともに夜空に揺れたあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...