フリッカリング

 ああ、あれはそういうことだったのか、と今になってようやく確認できたことがありました。極地研のHPに「最速で瞬くオーロラの撮影に成功」という見出しの記事を見かけたのです。オーロラはゆらゆらと静かに揺れて輝く、というイメージがありますが、時折「オーロラ爆発=ブレイクアップ」と呼ばれる現象に至る場合があります。その中でも、明るさや動きが非常に激しく変化する現象を「フリッカリング」というらしいのです。

参照:www.nipr.ac.jpより

穏やかに揺れるオーロラブレークアップ寸前フリッカリング状態か

 54次観測隊に同行中、一度だけしらせ艦上から、これに似た状況に遭遇したことがありました。その時の様子を当時の私は次のように記しています。「明るい火の玉のようになってぐるぐると大空を動き回る」、「激しく龍のように全天を動き回るのに、物音一つしないのが不思議。」参照:本HP2014.3.16の記事より … 続きを読む...

おかえり!

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの81回目。
(写真は54次隊のときのもの)

54次越冬隊、55次夏隊のみなさん、
大任を果たされてのご帰国、おかえりなさい!

目に映る、このごく当たり前の日常を前に
ほっと一息ついてもらいたい。


しらせがオーストラリアに入港すると
自然の多様さと近代文化の構造物が目に飛び込んでくる。
にぎやかな小鳥のさえずり、まぶしい限りの木々の緑、
どこからともなく流れてくる軽快な音楽、
行き交う人、人、人。


今までいた世界がまるで夢の中だったかのようだ。
しかし、氷の海で傷ついたしらせの船体を見ると
あれはやっぱり夢ではなかったのだと、思う。
無限に広がる氷海の中に一筋の道を切り開きながら進み、
オーロラの下をくぐりぬけてきたしらせが、確かにここにいるのだ。

その勇姿を見ていると、
この世界がいかに便利で、いかに無駄で、
いかに知恵に満ちていて、いかに欲に染まっていて、
人はいかに生きるべきか、君はいかに進むべきか、
と、問いかけてきたような気がした。


隊のみなさんの帰国に
今日は私も一人祝杯をあげようと思う。

これで、第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの役目もなんとか終えられた。
今回で最終回としよう。

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オーロラ観測の特等席

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの80回目。
(写真は54次隊のときのもの)

しらせは、どうやら無事、オーストラリアに入港したようだ。
このあと隊員たちはしらせを降り、空路で18日に帰国。

長いようで、あっという間のしらせ生活。
その中でも、もっとも印象的なのは、
やっぱりオーロラ。


しらせ甲板上に出ると、その周囲には
ただただ大海原が広がっているだけ。
夜になると、空と海との堺がほとんどわからなくなる。
甲板に寝転んで夜空を見上げると
宇宙空間の中にぽかんとうかんでいるようなのだ。
そんな中でのオーロラ観測は、まさに極上の空間だった。


オーロラはその時によって
明るさや色や動く速さなどが異なる。
条件がよいときには、
明るい火の玉のようになって
ぐるぐると大空を動き回ることもある。
激しく龍のように全天を動き回るのに、物音一つしないのが不思議。


しまいには、頭上で花火のように展開し、
光のシャワーを私たちに降り注ぐ。
その勢いに、思わず、手でさえぎろうとするも
その光のラインは、す〜っと私たちの体をすり抜けていく。
気がつくと、オーロラはまた
静かにゆらゆらとカーテンのようにゆらめいて、やがて消えていく。

地球を舞台とするオーロラステージの鑑賞に対して
しらせ甲板はまぎれもなく特等席だった。”… 続きを読む...

ヘリ格納

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの79回目。
(写真は54次隊のときのもの)

しらせの北上航行は順調に進めば
あと数日でオーストラリアに寄港することだろう。
そうしたら、
このバーチャル同行シリーズも終了となる。

だが、帰路のしらせ上の様子を
バーチャル行動したいことは
まだまだたくさんある。


隊員たちがしらせに帰還すると、
ヘリは倉庫に格納される。
3機のヘリは、昭和基地への物資の搬入や
昭和基地周辺への調査活動に大活躍だった。
南極観測にとってヘリはいつも重要な役割を果たしてきたのだ。
その労をねぎらうように、ヘリクルーたちは入念に手入れをする。


ローターをとりはずされた機体は、
船体にしっかりと補綴され
このあとはゆっくりと体を休めることとなる。
私も倉庫に休む機体のそばに近づいて
しばらくの間、これまでの南極行動を振り返った。”… 続きを読む...

氷の世界とお別れ

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの78回目。
(写真は54次隊のときのもの)

しらせが昭和基地を出発した、と言っても
そこはまだ南極圏。
凍てつく氷の海は、
時にこのような威力を見せつける。


これは、海の分厚い氷に大きな亀裂が入った光景だ。
相当な力が加わっていることはすぐに想像できる。
見ているうちに、
ここで地球が真っ二つに分かれているのではないか、
とさえ思えてくる。
亀裂は、ずっとむこうの水平線まで続いていた。

この亀裂はプレッシャーリッジと呼ばれ、
大きく成長することもある。
いわば地層の断層のようなものだ。


そんな氷の世界でたくましく生きていたのは、
コウテイペンギンたち。
愛嬌たっぷりの彼らだが、
むき出しの地球の中でも負けない強さを兼ね備えている。
以来、私のペンギンを見つめる目が
変わったことは言うまでもない。
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方向転換

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの77回目。
(写真は54次隊のときのもの)

第54次越冬隊、第55次夏隊を乗せたしらせは、
昭和基地を出てからずっと南極大陸沿いに東進してきたが、
そろそろシドニーへ向けて北上を始める頃だろう。


昭和基地を離れる頃のしらせは、
この氷の中をなんとかして方向転換し、
元来た道を戻っていく。
この写真は、昭和基地から戻る便から空撮したもの。
我々54次隊の時は、昭和基地に接岸できなかったので、
まさに、この場所が行き止まりとなっていた。


しらせは、
また寒い冬がやってきて氷に閉じ込められる前に、
ここを脱出しなければならない。
昭和基地がどんどん遠くなるのを見ながら、
しらせは帰路も
こうして力強く氷を割って進んでいく。”… 続きを読む...