しらせの住人

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの4回目。
(写真は54次隊のときのもの)

パース空港に降り立つと、
そこは、気温28度の初夏の様相だった。

隊員たちは、すぐに迎えのバス2台に乗り込む。
54次隊の場合は、
越冬隊員で1台、夏隊員(同行者含む)で1台、に別れて乗車。


バスは、「しらせ」が係留されているフリーマントルへ向かう。
このフリーマントルという街は、
実に穏やかで静かな港町。
そこに、突然、「しらせ」の勇姿が目の前に現れるのだが、
その時ばかりは、それはそれは、心が躍った。

第55次の隊員たちも
成田を発ってから、その翌日には、
もう、この「しらせ」の住人となるのだ。”… 続きを読む...

日本、シドニー、パース

第55次隊の南極観測活動に合わせて
一年前の南極観測活動と比べて味わう
バーチャル同行シリーズの3回目。
(以下は54次隊のときの写真)

1週間後、55次隊は日本を出発する。
空路、シドニーを経てパースへ向かう。
パースでは、
南極へ向かう砕氷船「しらせ」がまっているのだ。

かつては、
観測隊員も東京から「しらせ」に乗り込み、
赤道を越えて、オーストラリアに立ち寄り、
そこで物資を搬入して、南極大陸へ向かっていたようだが、
途中、
復路のみ空路を利用することになった後、
現在は、
往路も復路も、オーストラリアまでは空路を利用している。


写真は、昨年のこの時、飛行機の窓から見えた景色。
地平線の彼方を眺めながら、
わずか十数時間のフライトで地球を飛び越えて行けるなんて、
地球はちっちゃく、文明の力はすごいなあなんて思っていた。
だが、その一方で、
オーストラリアから南極大陸までは、
世界最高水準の砕氷能力をもつ「しらせ」ですら40日以上もかかるなんて、
地球にはまだまだ未知の世界があって、人の力なんて及びもしない、なんて思ったりもしていた。

あの日、窓の外の遥かかなたに
まだ見ぬ南極大陸への思いを重ねたが、
これから南極に向かう55次隊の精鋭たちの心には、
どんな思いや決意が去来してくるのだろうか。”… 続きを読む...

もうすぐ出発 第55次日本南極地域観測隊、

もうすぐ、
第55次日本南極地域観測隊が日本を発つ。
みなさんの
ご安全と大きな成果を心からご祈念申し上げます。

今後は、隊員の方々から、
インターネットを介して
様々な情報がリアルタイムで寄せられると思う。

これからの約4ヶ月間、
ちょうど一年前の南極観測隊の活動と比べながら、
それらを楽しんでいきたいと思う。
(以下は54次隊のときの写真)


第55次隊は、11月22日に空港に集結。
それまでの訓練や打ち合わせでチームワークを高めてきた面々は
ここで久々に再開することになる。
この時ばかりは、みんなおそろいの「正装」姿だ。
54次隊の場合は、黒のジャケットにベージュのキャップ。
どちらにも、隊のマークがプリントされている。
遠目には、なんだかペンギンのようにも見えたものだ。
今年の隊は、どんな「正装」なのだろう。
隊のマークも気になるところだ。

空港は、すでにクリスマスモードになっていて、
家族や、同僚たちと別れを惜しむ姿があちこちで見られる。
“… 続きを読む...

おもてなしの授業

南極授業が授業であるために50
(最終回)

今回の2枚で
シリーズ「南極授業が授業であるために」を
最終回としたい。

かなり個人的なことで恐縮だが、
かなり「個人的」な思いが
授業作りには大切だと思っている。

子どもとともにこんな授業を創り上げていきたい、
そう願い続けているところに、
教材はふと姿を現してくれるものなのだ。
セレンディピティの不思議な力は確かにあると思う。
それは、かなり「個人的」な思いのなせるわざである。

例えば、この2枚、
左が、我が故郷富山の河川、常願寺川に見られる大転石で、
右が、南極の露岩地帯にぽつんと置き去りにされた迷子石だ。
個人的に、ずっと見ていても飽きることがない。
だれかにとっては
ただ目の前を静かに通り過ぎていくものでも、
自分には、そこから授業が見えてくるのだ。
大多数の人の目に止まるかどうかなんて、
あまり関係ない。

授業づくりも、
最初から「大多数」のことなど考えなくてよいのではないか。

目の前の、
誰か一人のための授業があっていい、
たった一度だけの、
二度とできないような授業があっていい、と思うのだ。

近頃は、
「誰でもできる〜〜型授業上達法」のようなものがもてはやされている。
「再現性」のある授業事例こそが世の中のニーズ、と言わんばかりだ。
そんな授業で、子どもたちが本当に学ぶ喜びを味わえるのなら、
それでもよいのかもしれない。

ただ、往年の魅力的な授業には、
マニュアルには決して載らないようなノウハウがある。

マニュアルを越えた、
極上のサービスが
「お•も•て•な•し」と呼ばれるように、
授業にだって、
目の前の子どもたちにあうような
授業者の教育観を全身に込めたような
そんな精一杯の「おもてなし授業」があっていい。

南極授業が授業であるために。”… 続きを読む...

地球カレンダー

南極授業が授業であるために49

今回の2枚はこれ。

左は、立山の地形。
右は、南極の露岩地帯に見られる地形。
どちらも、氷河が形作ったものだ。

川の流れが周囲の地面を
浸食し、運搬し、堆積させるように、
氷の流れも同じように、
大地の上を動くときに、
そこを浸食しながらつき進んでいく。

そうしてできあがったこれらの地形には、
気の遠くなるような歳月を感じる。

地球46億年の歴史を1年カレンダーにたとえると、
人類が登場したのは、
12月31日のおよそ20時頃になる、
というのは有名な話。
同様に、
恐竜が絶滅したのは、
およそ12月26日頃となる、
いうのもよく聞く話。

これを昭和基地周辺の大地にあてはめてみる。

昭和基地周辺の岩石は約5億年前のものと考えられているので、
5÷46=0.1086956….倍… 続きを読む...

故郷の自然の魅力

南極授業が授業であるために46

南極のことを伝えるために
「南極授業」をするわけではない、
ということは
9月のある日のここで書いた通り。

では、なんのための「南極授業」なのか。


この2枚の写真を並べて見てみる。
左側は、わが故郷富山の立山を映すみくりが池。
右側は、南極にそびえるシェッゲという断崖を映すスカルブスネスの海。
どちらも、鏡のような水面に映った姿がとても美しい。
風がおさまり、波が静まった一瞬だけ、
このような光景を見せてくれるのだ。

この「逆さシェッゲ」を南極で見たとき、
私の脳裏には、
故郷立山のみくりが池が
はっきりと浮かんで見えたのだった。
そして、
故郷の自然の魅力を
再発見させられていた。

なんのための「南極授業」なのか。
その問いの答えのひとつが見つかったような気がした。”… 続きを読む...