あれは夢ではなかったのか(14)(vol.140)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの14回目。
(14)コケボウズ

スカルブスネスにある仏池の底にすむコケボウズ。
高さ80cmほどの塔のようなコケ等の集合体。
その成長速度は1年に0.7mmと極めて遅く、
そこまで成長するのに少なくとも300年はかかるという。
実際に手に取って顕微鏡で見てみると
緑色の小さな芽のようなものが見えた。

そのわずかな緑の息吹に
極限の世界でも着実に生きようとする生命力を感じたあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(13)(vol.139)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの13回目。
(13)仏池

スカルブスネスにある仏池の底には、
コケボウズと呼ばれる謎多き生物がいる。

この池にゴムボートを浮かべて
そのコケボウズを採取したり、
湖面から水中にカメラを入れて池の底を撮影したりした。

ボートの上から見上げた400mの断崖をもつシェッゲと、
ボートの真下の透明な水中に見た謎のコケボウズの群落と、
その両方にはさまれたような感覚になったあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。
“… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(12)(vol.138)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの12回目。
(12)幻日

太陽の横に、両側に小さな太陽が。。。
とつい思ってしまうような幻日。

太陽が出ているときに
気温が下がってダイヤモンドダストが降ると、
こんな現象が見られるという。

太陽と氷の粒が創り出す美しい光の現象が
手が届くような地表近くで見られたあの光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

南極大学復路(vol.135)

今、南極大学が開講している。
毎回が一流の講師陣の特別講義なので会場はぎっしりと埋まる。
そんな南極大学は往路では「しらせ大学」という名で開講していたが、
復路2日目の南極大学で、考えさせられる話題があったのでご紹介。

まず、このタイトルがいい。
「昨年の昭和基地は、寒かったのか、あたたかかったのか」
(越冬隊の方が講師だったので、昨年=2012年2月〜2013年1月までのこと)
この謎めいた問いから講義はスタートする。

講義では、次々と気象データの事実が紹介されていく。
気温の推移のグラフだったり、
この寒さは歴代〜位というランキングだったり、
実際の写真だったり、
見ていても飽きないような工夫がちりばめられている。
例えば、
5月(南極では秋)にー40℃以下を記録(5月としては19年ぶり)。
9月(南極では冬)にー43℃を記録(史上2位)。
そうかと思えば、1月(南極では夏)の平均気温が+0.8℃(史上2位)。
しかも12月22日の雨は9年ぶり、史上3回目。

この事実の比較だけでも、
「寒かったのか、あたたかかったのか」がますます謎めいてくる。
しかも、気温の高低差の52.5℃は、なんと史上1位だときた。

地球温暖化が叫ばれている昨今、
気温が上昇していることだけで「温暖化」とは言えない。
「温暖化」の影響は、むしろ地球の一部では降雪量の増加として現れたり、
海水温の低下として現れたりするという。
昭和基地における、この気温の高低差の拡大もそのひとつなのだろうか?
今後の南極の観測から、ますます目が離せない。
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あれは夢ではなかったのか(11)(vol.134)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの11回目。
(11)スカルブスネスの実験室

野外に出ればその場所に理科室兼実験室が出来上がった。
これは、スカルブスネスの観測拠点小屋の前に作った即席実験台。
ここには立派な機材などない。
その実験台の主も決して立派な人物ではない。
だが、この実験室は地球の端にあり、
地球の端で見つけたものを直に観察することができる実験室だった。

時折、ナンキョクオオトウゾクカモメが飛来したり、
日中の日差しで緩んだ海氷が動き出す音が響いたりしたあの実験室の光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(10)(vol.132)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの10回目。
(10)蜂の巣山の実験室

私には、実は私だけの専用の理科室兼実験室がもう一つあった。
それは、蜂の巣山のてっぺん。
蜂の巣山とは、昭和基地のある東オングル島最高峰の山で標高は43.4m。
この理科室兼実験室のよいところはたくさんある。例えば、
カタバ風の通り道があって風力発電の実験にちょうどよい、
視界を遮るものがなく360度見渡せるので、太陽や月の動きを観察しやすい、
夜遅くの沈まない太陽の光をとらえられるので夜の太陽光発電の実験ができる、
迷子石や蜂の巣状に穴のあいた奇岩がたくさんあって観察したくなる など

そして何よりも、眼下に広がる昭和基地と、
凍って固まったまるで絵画のような海や氷山を一望できるあの理科室の光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。
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あれは夢ではなかったのか(9)(vol.131)

 もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの9回目。
(9) 第2夏宿前の実験室

私は理科の教員としてこの地を訪れている。
しかし自分の理科室はもちろん自由に使える小さな実験台すらない。
ないのなら自ら作ってしまおう、それが観測隊の精神。
いつしか、この場所が、私がいつも自由に使える
専用の理科室兼実験台となっていった。

ここは第2夏宿の前。当然のことながら屋根も壁もない屋外の理科室だ。
風も吹けば、小雪もちらつく。
だが、そこには何かの基礎工事の跡があり、
それが御あつらえ向きの「デスク」になってちょうどよかった。
水筒に温かい飲み物を入れ、ここでよく授業の準備をした。

目の前には西の浦の凍った海面がただただ静かに広がっていて、
夕刻には鮮やかな橙色の世界が一望できる理科室の光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...