あれは夢ではなかったのか(9)(vol.131)

 もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの9回目。
(9) 第2夏宿前の実験室

私は理科の教員としてこの地を訪れている。
しかし自分の理科室はもちろん自由に使える小さな実験台すらない。
ないのなら自ら作ってしまおう、それが観測隊の精神。
いつしか、この場所が、私がいつも自由に使える
専用の理科室兼実験台となっていった。

ここは第2夏宿の前。当然のことながら屋根も壁もない屋外の理科室だ。
風も吹けば、小雪もちらつく。
だが、そこには何かの基礎工事の跡があり、
それが御あつらえ向きの「デスク」になってちょうどよかった。
水筒に温かい飲み物を入れ、ここでよく授業の準備をした。

目の前には西の浦の凍った海面がただただ静かに広がっていて、
夕刻には鮮やかな橙色の世界が一望できる理科室の光景。

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”