越冬交代

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの64回目。
(写真は54次隊のときのもの)

去る2月1日、
第54次越冬隊と第55次越冬隊は、
昭和基地の管理運営を交代した。

我ら54次隊の越冬隊員のみなさん、
本当にお疲れ様でした。
まだ、残務はあると思いますが、
とりあえず大任を終えられ
ほっとしておられることでしょう。


思えば1年前の2月1日。。。。。
天気は快晴で、昭和基地前の19広場では、
越冬交代セレモニーの準備が着々と進められていた。
1年以上も苦楽をともにしてきた53次隊の越冬隊員のみなさんにとっては
万感迫るものがあったに違いない。


準備が整うと、53次、54次の越冬隊員たちが互いに向かい合って整列する。
私たち夏隊はその周囲で儀式を見守る。
厳粛な空気の中、それぞれの越冬隊長がご挨拶をされた後、
場所を入れ替えて越冬交代が宣言。
この時の両越冬隊長の振る舞いがとても印象的。

まず、53次の越冬隊長は、
隊員一人一人にプレゼントを手渡していた。
どうやらそれは隊員の特徴や性格を全て知り尽くした隊長ならではのもので、
その隊員にぴったりくるようなものだったようだ。
プレゼントが受け渡されるたびに、
53次越冬隊員たちから笑いやうなづきが聞こえてきたのはそのせいだろう。
しかも、なんと手作り。
芸術的なセンスと巧みな技能を兼ね備えておられた。

次に、54次の越冬隊長は、
隊員一人一人の氏名を心を込めて呼名した。
なんと、名字も名前もフルネームで、
もちろん、メモなどいっさい見ずに、
すらすらと呼び上げたのである。
はじめのうちは、みんな静かに聞いていたが、
20名をこえた辺りから、周囲にどよめきが聞こえ始めた。
(もしかして、隊長、下の名前までみんな覚えてるのか)
みんながそのことに気づき始めたのだ。
最後の1名が呼ばれると、大きな拍手が巻き起こった。

私は、隊長の大きな愛を感じずにはいられなかった。
そして、この家族のような越冬隊員たちを
うらやましく思った。


その後は、しばらく歓談が続く。
53次の越冬隊員たちは
やはり安堵の表情に満ちていた。
54次の越冬隊員たちは
こんなときでも引き継ぎのことで頭がいっぱいのようだった。


しばらくすると、さっそくしらせに帰艦する越冬隊員たちの見送りが始まった。
今回は54次越冬隊員たちが見送られる番だ。
今頃は、すでにヘリでしらせに戻っておられることだろう。
2月1日から順にフライトし、
今日、2月8日までにはほとんどの隊員が昭和基地を離れるらしい。

55次隊の越冬隊のみなさん、
昭和基地をよろしくお願いします。”

前の記事

パンジーエリア

次の記事

もう一つの観測隊の姿