授業のプロとして

南極授業が授業であるために6

一方、コンテンツを作成するはしたが
最終的には「教材」となり得なかったものもある。

その一つが、例えば
「JARE54-ゾンデ放球」というコンテンツ。
私が昭和基地入りしてから、
まず最初に取材を行ったのがこれだった。

ゾンデの放球は、
地球の気象観測に欠かせない事業。
我が国の南極観測が始まって以来
ずっと継続されてきている。

大きな風船のようなものを膨らませ、
そこにラジオゾンデという
小さな観測機器を取り付けて30km上空へ飛ばし、
様々な気象データを集積しているのである。

気象隊員たちは、
昼夜通して観測小屋に在駐し
午前2時と午後2時の1日2回、放球する。
真夜中でも、どんなに風が強くても、である。

わたしは、このコンテンツの中に、
実際に隊員がゾンデを膨らませて放球するまでの過程や、
慎重かつ慣れた手つきや、
気象観測を継続してきた想いを
そこに投影したつもりだった。

もっというならば、
このような隊員たちの地道な努力と、
それを何十年も継続しながらこつこつとデータを積み重ねてきたことが、
「オゾンホールの発見」という
南極3大発見につながったのだ、
というメッセージ性をこめたつもりだった。


数日後、南極授業が実施された。
このコンテンツを含む場面は、
実際の授業ではどうだったろうか。

授業者としての直感的な感想は、
「子供の心をつかむまでには至らなかった」
である。

すぐに、その原因を自分なりに考察した。”