オーロラ (vol.126)

24日未明、オーロラが出現した。

午後10時頃のそれは、満月の光のせいもあってか
星空にかかる白っぽい雲?と見間違えてしまうような繊細な光の帯だった。
それでもその帯は、まるで川の流れのようで
あるときは一筋の波状になって夜空を横断していたり、
またあるときは、幾筋もの線になって広がったりして、
常に私たちの目を楽しませてくれた。

1時間ほど楽しんだあと、一旦船室に戻った。
残務をし、就寝の準備を整えた頃、
「よし、もう一度だけ観察に行ってから寝よう」と船室を出た。

午前1時半頃だった。
今度は、見上げた空の様子が先ほどまでとは一変していた。
真っ白い生き物のような光が天頂付近でゆらゆらと動き回っているではないか。
そうかと思うと、次の瞬間には、
それが大きな渦巻きのようになり、空の上でぐるぐると回りだした。
圧倒されている間もないうちに、突然
強い光の玉が発生したかと思うと、
それは予期できぬ動きで満点の星空の中を自由自在に駆け巡った。
満月の光をはるかにしのぐ強烈な光と動きの激しさに、
こちらに向かってくるのではないかと思わず身をかがめてしまうほど。
しかし、不思議なことに音はいっさいしない。
最後には、蜘蛛の巣のような白と赤の光の網を私たちに降りかぶせてきた。

この激しいオーロラの出現に、時間も場所もつい忘れてしまったが、
ビデオのカウンターからすれば2〜3分程度のものだったようだ。

あっという間のオーロラに心を奪われつつ、呆然としたまま船室に戻った。
就寝の準備をしたはずだったが、気持ちが高ぶって一向に眠くならない。
「よし、今、目の前で巻き起こった出来事をもう一度目に焼き付けよう」
そう思って目を閉じた。”