スカーレンサウンド(vol.88)

スカーレン滞在の目的はいくつかあるが
その一つは、インフラサウンド計の設置。
人の耳には聞こえないような周波数の音を感じ取る装置だそうだ。
その装置とその他の地震計などの測定結果とをクロスさせることで、
より正確な観測をしようという試みらしい。

小高い山の上に、計器を設置する場所が決まり、
太陽光パネルや電源の接続が終わると、
そこからが私たちの出番となる。
岩にアンカーでしっかりと固定し、
空気の振動を感じるホースを8方向に30mずつ伸ばし、
それをソフトボール大くらいの石で固定していくのだ。
石を運んで積んでいくのはもちろん一人一人の手作業。
手分けして作業をするが、1日でできるのは、一人あたりせいぜい30mのホース1〜2本分。
みんな、数時間は無心、無言で、
ひたすら下を向いて、石を運んでは積んだ。
時折、目を上に向けると
遠くには荒々しい氷瀑とむき出しの露岩が
屏風のようにそびえているのが見える。
その手前で、小さな人間たちが、ごそごそとやっている光景がなんとも言えない。

そんな作業を終えて、3日間滞在したスカーレンから昭和基地に戻ると
先に日帰りで戻っていた隊員があるビデオを見せてくれた。
「スカーレンで氷が崩れる音、聞きました?」
「そんなの、聞こえたんですか?」
「ちょうどカメラを回し始めて、1分もしないうちに、すごい音がして。。。」

すぐにビデオ視聴となった。
「ゴーゴゴー」
地響きというか、雷というか、
低くて、どことなく乾いた音が確かに聞こえる。
そばにいた隊員たちの驚いた声も録音されていて臨場感がある。

さて、私たちが設置してきたインフラサウンド計は、
あの時、何かを感知しただろうか。
いや、あのときは、まだ設置する前だったかな。。。残念。

しかし、何もあわてることはない。
氷ができて、流れて、崩れて。。。。。
そんな循環を何百年、何千年と続けてきた南極のことだから。