南極の気あらし(vol.81)

スカルブスネスきざはし浜滞在3日目。
夜8:30過ぎ、きざはし浜に異変が起きた。
きざはし浜に雲か霧のようなものが押し寄せてきたのだ。

きざはし浜は、内湾のようになっている入り江の中にある。
その入り江の向こうがわには凍り付いた南大洋が広がっている。
いつもなら、この静かな入り江の海氷を眺めて心が休まる思いをしているのだが。。。

それが、今日ばかりは様子が違った。
夜8:00頃から、いつもに増して冷たい風が吹き始めていた。
テントを行き来するのも思わず足早になるくらい冷たい空気だった。
今日はずいぶん冷えるな、と思いながら外を歩いていると、
同じくテントの外にいた他の隊員が
「なんだか入り江の向こう側がすごいことになっている」と教えてくれた。
そう言われて一緒にその方向を眺めた。
すると、これまで見たこともないような
雲か霧のようなものが海氷から立ち上がっているではないか。
一見、地元富山湾で見られる「気あらし」のようではあるが、
ただ、それがドライアイスのようにもくもくとわきあがり
こちらに向かって勢いよく押し寄せてくるの様は初めて見る光景だ。
まるで、映画のセットの特撮映像を見ているような
そんな現象が目の前で起こっていた。

本当に、地球というところは、
ぼくらの知らない表情をいくつももっているものだ。