フェニックス(vol.75)

ものごとには失敗はつきもの。
というか、
そもそも完全なる失敗なんてあるのだろうか。
失敗は必ず何かをもたらしてくれるものである。
今日はその思いを強くした。

あるグループで、今日、大気観測系の実験が行われた。
個人的にずっと楽しみにしていた実験で、
しらせの船内にいるときからその隊員には
「ぜひ見させて下さい」とお願いしていた。
(実験の詳細はまた後日)

昨日の夕食時、
「天気さえよければ、明日、やります」と教えてくれた。
今日、さっそくその現場へ向かった。
準備時間約90分の後、いよいよ、実験開始。
ところが、
思ったように機械が反応せず、
肝心のマシンはヘリコプターによって回収されることとなった。

実験はそこで一旦終わったが、
私はなぜか、
その回収シーンまで見届けたい気持ちだった。
回収さえできれば、また次のチャンスがあるように思えた。

ヘリポートにその姿が戻ってくるまでには
そう時間はかからなかった。
マシンのダメージもそう大きくはなさそうだった。
考えようによっては、このマシンは、
自らのエマージェンシー状態を正常に関知し、防御行動をとっていたのだ。

正常なところと、そうでないところがあるのなら、
問題点は何かがより浮き彫りになってくる。
それを解決して、また次にチャレンジする。
それが研究の楽しさだろう。

いや、それは何も研究だけに限らない。
「生きていく」とはそういうことの連続なんだ。

ちなみに、このマシンは
フェニックス(不死鳥)号と名付けられている。