流氷縁進入 (vol.54)

本日未明に、しらせは流氷縁に進入した。

流氷縁とは、海面のあちこちに
流氷が漂い始める境のようなところ。
船内では、事前に
「明日には流氷縁に入る」
という予報が出されていた。
だから、昨日の夜は、
明日はきっと初雪が積もるぞ、とわくわくしながら眠った
そんな子供の頃と同じ気持ちでベッドに入った。

夜中の3時過ぎ、
ゴロゴロゴロゴロという雷のような、
低い地響きのような、そんな音で目が覚めた。
船は小刻みな揺れていたが、
それは、昨日までの波の揺れとは明らかに違っていた。
「来た?!」
すぐにベッドから飛び起きた。

そこには、信じられない光景が広がっていた。
海が昨日までとはまるで変わっていた。
見渡す限り漂っている大小無数の流氷は、
船体に当たっては、ゆっくりとひび割れながら
後方へと流れていく。
そういうことが幾度となく繰り返されながら
しらせはただただ力強く南大洋を突き進んでいく。

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