4の1編 空気の限界実験

ゴミ袋に空気を閉じ込めることに成功したみんな。
袋を胸に抱え込んだり、
枕にしてみたりして、
そのふわふわ感を味わっていた。
みんなは、空気を閉じ込めることに成功したと思った。

ところが、
ゴミ袋の先を指で押すと、
いとも簡単にへこんでしまう。
空気がもれていないのに、である。

そして、
再び指を離すと、
袋はもとの形に戻ってしまう。
新たに空気は入れていないのに、である。

この現象に子どもたちは次々に考えを述べてきた。
きっと、空気が別の場所に移動したのだ(移動した説)
きっと、空気が小さくなって縮んだのだ(縮んだ説)
きっと、空気が抜けたのだ(抜けた説)

説が出そろいきるかきらないうちに、
「それなら、固い容器に入れて確かめてみればいい」
「空気がどこまで押せるか限界も確かめたい」
という解決策が提案された。

そこで登場したのが、
長さ1mの大きな筒だった。
ここに空気を閉じ込めて、押してみて、
もしも押せたら(縮んだ説)ということになる。

さっそく、演示実験となった。
中央の巨大な筒に、みんなの視線が集まった。
いよいよ押し棒が圧し込められた。
「やっぱり空気が縮んだのだ」

と、次の瞬間、授業者の手が一瞬ゆるんだ。
同時に、押し込んでいた押し棒が、
バネのように押し返されてもとの位置の方に戻った。
それを子どもたちは見逃さなかった。
「あっ!」
「あれ?」
「今、棒が動いたよね」
「そうか、わかった!」
「そういうことか!はい!はい!」

そこからは、
押し込んだ棒が、なぜ、元の位置へと戻ろうとしたのか、
そのわけを、
空気のイメージ図を交えながら、熱心に語り合う姿で
教室はいっぱいになった。

「ぎゅーっと押されたのが、はあ〜となった感じ。」
「逃げ場所がなくなった空気が、がまんできなくなって、押し返した。」
「初めはなんにもないただの空気が、押されると、力を出してくる。」

空気の限界実験は、
限界がわかった時点で子どもの中では完結し、
次の瞬間からはもう、
「なぜ、棒が押し返されたのか」
という新たな問題が子どもの中で成立していたのだった。

近頃は、
学習のまとめの部分をしっかり行いましょう、とか、
その1時間でわかったことなどをまとめる時間をとりましょう、とか
とかく45分のまとまりをきれいに整えることに重きをおいた論がやや活発なようだが、
もちろん、それは大事なことではあるけれど、
なにもそれはとりたたて言うこともなく当然のことであって、
むしろ、授業者が留意しておくべきことは、
子どもが自ら次に歩み出そうとしているその勢いや、
子どもが新たに獲得したであろう視点というものを、
機を逸せずにとらえてその場で返す、
ということの方ではないかと思ったりもするのである。

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