別世界(7)

山頂の別世界に
まだまだ浸っていたい気持ちをなんとか切り替え、
今来たルートで下山する。

予定より、少し遅れ気味だった。
一の越まで戻ってきたところで山荘に電話し、
40分程度遅れることを伝える。
幸い、日が傾いてきても、
天候は良好である。
焦らず、安全第一で進むことにする。

夕方になって、ようやく
山荘が手の届くようなところまでやってきた。
そこから来た道を振り返ると、
さっきまでそこに立っていた雄山の山頂が、
遙か遠くに高くそびえているのが見えた。
「あ〜、あの頂上まで行って、帰ってきたんだな〜」
当たり前のことでも、つい口に出てしまうものである。

山荘で、荷物を受け取り、それぞれの部屋へと向かう。
適度な疲労感と空腹感と達成感と安心感とで
なんだか満たされた感覚となる。

ちょうど、窓の外には真っ赤な太陽。
室堂一帯が、オレンジ色に染まっていく。
山肌が、紫色に眠っていく。
室堂が、再び「別世界」に変身していく。

地球は生きているんだな、とその時、思った。