ひみりかセミナー 見えてきた約45年前の詳細な授業観

 今年もひみりかサマーセミナーに参加してきました。日体大の角屋先生、早稲田大学の露木先生のご講演から、新進気鋭の若い先生方の実践発表まで伺える貴重な機会です。特に、今年のセミナーは、来年度(平成30年度)に開催予定の日初理全国大会富山大会の方向性を考える一つの場ともなっていました。私も「これまでの富山の理科教育や今後の方向」などについて発表せよ、という大先輩からのご指示もあり、この場で発表させていただきました。

 テーマは「約45年前に行われた『丸いてんびん』の授業の再現授業の試み」としました。「丸いてんびん」の授業というのは、ノーベル化学賞受賞者田中耕一先生が「科学者としての原点は小学校時代に受けた先生の理科の授業にある」と述べられたその一つの授業です。



 その授業を再現するには、まず、当時の教材を復刻するところから始めました。それが冒頭の写真です。

 次に、当時の文献を調べていきました。教材を扱う教師自身が、どんな授業観、子ども観で指導していたのかを知らなければ、忠実に再現できないからです。そこに現在までに明らかになってきた子どもの思考の道筋や教師の手立てなどを付加していきます。

 もちろん、当時の「滑車」の単元も今は存在しませんから、単元の全体構想をそのまま流用することはできません。現代風なアレンジが必要でした。その意味でも完全なコピー授業ではありません(仮に残っていたとしても授業の完全コピーなどそもそも不可能なのですが)。それでも、できる限り当時の授業に近づきたいと思いました。

 結果、再現授業では、開始から30分を過ぎた辺りで、ある児童から「天びんという道具と同じような気がして」という発言が飛び出したのです。これは「丸い天びんだ」という当時の発言と同質の発言と捉えることができます。その他、実際に実践してみることでしか見えてこない詳細なやりとりなどにも触れることができたのです。

 「温故知新」。来年度の研究発表会に向けては、昭和40年代からずっと行ってきた問題解決の授業に、最新の授業分析に裏付けられた授業実践力を付加していくことができたらと個人的に願っているところです。