一足早い慰霊祭
第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの71回目。
(写真は54次隊のときのもの)
![]()
昭和基地の中心、
19広場をちょっと下った所に、
福島ケルンが建立されている。
観測隊の歴史の中で唯一の遭難事故で
尊い命が奪われたのだが、
このケルンはその教訓を忘れまいという
強い決意の表れでもある。
![]()
毎年、越冬隊はその越冬成立の節目で
安全祈願を兼ねて慰霊祭を行うのが常。
しかし、私は夏隊だったため
慰霊祭には参加できないとがわかっていた。
それでも、こんな自分が南極の地で
何かできることはないだろうかと思ったとき
その一つは、南極観測にかけた先輩隊員の供養だと思った。
![]()
私は、リュックの隅に衣と袈裟と
経本とおりんと香炉とろうそくの入ったかばんを
そっとしのばせて持って行った。
実家はお寺だったので、携帯に便利なものを出発前に準備した。
越冬隊長からは、「隊としては後日、別に行うつもりだが、
君が個人的な思いでする分には何の問題もない」
との返答をいただいた。
その日は折しも、ブリザードが近づいてくると予報されていた。
私は、天候が荒れる前の昼食時に、
休憩をとっている隊員たちに声をかけ、
慰霊祭を行うことにした。
ケルンの前には、数名の隊員たちが集まった。
私の読経はとても上手とはいえないが、
それでも滞りなく
しめやかに慰霊祭を執り行うことができた。
“
