パドル

第55次隊の南極観測活動に合わせた
バーチャル同行シリーズの7回目。
(写真は54次隊のときのもの)

55次隊の砕氷航行は
かなり困難な道のりとなるだろう、
そう予想されている。

我ら54次隊のときも、
南極周辺の定着氷の映像などの情報から、
昭和基地への接岸は厳しいかもしれない、
そう予想されていた。
実際、54次は厚い氷に阻まれ、2年連続の「接岸断念」となった。

しかし、いつも最悪の状態を想定しておくのが南極観測隊。
接岸不能は、ある意味、想定内だったとも言える。

ただひとつ、これは想定外だったと言えることがある。

それは、接岸不能になるほど氷が厚くてガチガチなのなら、
最後は、氷上輸送で物資を昭和基地まで運ぶことができる、という想定だ。
20〜30km離れた場所からの氷上輸送ならば、過去に実績もある。


ところが、だ。
54次隊では、昭和基地から約30kmの地点で厚い氷に阻まれたのに、
昭和基地に近い海氷では氷が溶けてゆるみはじめているというのだ。
昭和基地で越冬していた53次隊の隊員たちが
昭和基地側から安全なルートを模索してくれていたが、
雪上車を走らせるには危険な状態だった。
(54次隊 昭和基地周辺の状況 水色に見えるのが溶け始めたパドル部分)

つまり、
昭和基地への接岸が不可能な上に、
氷上輸送もできない、という「想定外」の状況になってしまったのだ。
南極観測に必要な燃料や物資を運び込むには、
もはや、ヘリコプターによる空輸という手段しかなかった。

今回の55次隊で、
しらせに搭載されるヘリのサイズがややアップされたのには、
そうした背景があるのだろうと思う。
地球の果ての極域観測だからこそ、
55次隊も、
最悪のケースを想定して行動している。”