あれは夢ではなかったのか(1)

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。

定着氷域を離れて大海原を航海中の今となっては、
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを不定期のシリーズとしてここに書き留めていきたい。
(1)アデリーペンギンのルッカリー

見渡す限り人っ子一人いないこの場所。
耳に聞こえるのはペンギンたちの鳴き声と風の音だけ。
そこにあったのはアデリーペンギンのルッカリー。

親子寄り添いながらじっとたたずむものたち。
身をかがめて小石をつまみせっせと巣に運んで積み上げるものたち。
氷の割れ目から海に飛び込んでは自由自在に泳ぎまわるものたち。
別のえさ場を求めて岩場の坂を一歩一歩登るものたち。

私たちの訪問を気に留めることもなく、
自分たちの時間をどこまでも穏やかに、
それでいて、ひたすら力強く過ごしている。

まさにペンギンたちの楽園とでもいうべき光景が、
目の前に突然と現れたあの日。
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”