一つ一つ解決(VOL.77)

南極での活動は、
入念に計画され、十分に準備を重ね、慎重に慎重を重ねて実行される。
しかし、それでも、
どれもスムーズに進むわけではないということが最近わかってきた。

ラングホブデ雪鳥沢で目覚めたこの日、
朝一番で、測地系の機材の保守作業を行うため、
測地点のある岩場の頂上へ向かった。
まず最初の問題は、データ回収などの一連の作業を終えた時に出てきた。
太陽光パネルの取り替え作業中、気にかかる部品に出くわしたのだ。
慎重に慎重を期すために、他の数カ所の部分も全て調べてみる。
いつかまた調べに来る、というわけにはいかないのだ。
結果的には他の部分については異常はなかった。
ただ、時間は通常の何倍もかかった。

次に出てきたのは、ボルトの大きさが合わないという問題だった。
いろんなサイズがそろっている便利屋さんが近くにあるわけではない。
工具の調達のために、他部門の隊員とトランシーバーで連絡を取り合い、
なんとか使えそうなものがありそうだったので、
一旦、岩の山をおりて、その工具を受け取り、また山を登った。
結果的にはその工具でなんとか調整して問題を乗り越えた。
ただ、時間は通常の何倍もかかった。

すると今度は
既存のステーと今回持ち込んだパネルとが合わないということがわかった。
でも、合わないからといってあきらめるわけにはいかない。
古いステーを再利用する、番線で止める、新しい穴をあけるなど様々な案が出たが、
どれもうまくいかなかったり、実現性が低かったりした。
そんなとき、越冬経験のあるベテラン隊員が心配して岩山の上まで登ってきてくれた。
相談しているうちにかなり有効な発想が生まれた。
もう夕方になっていた。
解決の見通しが出てきたので、
夕食をとってから再びチャレンジしようと一旦、岩山を下りる。
午後8時半過ぎ、再び岩山の頂上を目指した。
電動の工具を使うため、今度は発電機も背負った。
この時はグループのみんなが岩山の頂上を目指して歩いた。
頂上で作業行程を共有し、慎重に取り組んだ。
その結果、見事、問題を解決することができた。
ただ、時間は通常の何倍もかかった。

ただ、時間は通常の何倍もかかったが、
7人の表情には、笑顔と達成感があふれていた。