キアゲハ騒動

キアゲハの幼虫がきっかけで、
ある騒動が巻き起こった。
(まあ、こういうことは小学校低学年ではよくあること)

生活科で虫見つけに夢中になっていた他学年の子たちが、
ある日、キアゲハの幼虫を発見し、
自分たちの虫かごで育てたり観察したりしていた。
虫見つけに心を燃やしていた子たちなので、
キアゲハの発見は当然のことだった。

そのことが、
2の1農園の主たちの目に留まったのである。
すると今度は、
キアゲハは自分たちの畑にいたのだから、
自分たちのものであるという、
これもまた当然の主張がつきつけられたのである。

他学年の主張はこうである。
ぼくたちが見つけた幼虫なのに!
「返せ」と言われてもどうして返さなきゃいけないの!

2の1農園の主たちの主張はこうである。
自分たちのキアゲハが獲られてしまった!
しかも、虫かごで不自由な生活をしていてかわいそう!

こうして、休み時間のわずかな間に、
キアゲハ騒動が広がっていった。
あまりの騒ぎに担任たちも
互いの事情を聞いたり、なだめたりした。
それでも、
熱くなった子どもたちの心は
一向におさまる気配がなかった。

ところが、
次の休み時間を境に、
騒動が一気に鎮まりはじめたのである。
担任たちも手を焼いていた あの状況 が、である。

不思議に思った担任は、
さっきまで、騒動の渦中にいた子どもたちの声に耳を傾けてみた。
そこから聞こえてきたのは、
こんな会話だった。

「もう、ほんとにどうなっているの?」
「虫かごの中で飼うって言うんだから、えさとかないのに!」
「だから、畑のニンジンの葉っぱ、持って行ってあげたわよ。」
「これで、ちょっとは安心ね。あの幼虫たちも無事にさなぎになれると思う。」

キアゲハ騒動の顛末には、
私たち大人も
大いに見習わなければならないと感じた次第。

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