アゲハ誕生

昨年度担任していた教室で、
秋にアゲハの幼虫が持ち込まれたことがあった。
間もなく冬で寒くなるので、
幼虫もきっと、早くさなぎになりたかったことだろう。
案の定、
教室に持ち込まれて虫かごに入れてすぐに、
それはさなぎになった。

あれから特別おせわをしていたわけでなく、
教室移動の時にわすれないように
一緒に移動させていただけだった。

新しい年度になったある日、
「先生、アゲハが成虫になりました!」
と数名の子どもが息を切らして報告にきてくれた。
さっそく見に行くと、
小さな虫かごの中でアゲハは、
やや小振りだが、
美しい羽根を広げてたたずんでいた。

「きれいだね〜」
「ちゃんといきていたんだね〜」
小さな虫かごの回りで
みんなで頭をつきあわせて覗き込んだ。

「そうだ、蜜をあげよう」
テイッシュペーパーに砂糖水をしみこませて与えた。
鉢の花も入れてやっていた。

私はしばらくその場を離れていたが
戻ってきてもなお、その場でじっと観察していた。
「先生、アゲハくん、
 口からストローをのばして蜜を飲んでくれたよ。」
と満足そうだった。

理科の目標に
「自然に親しみ,見通しをもって観察,実験などを行い,問題解決の能力と自然
 を愛する心情を育てるとともに,自然の事物・現象についての実感を伴った理解
 を図り,科学的な見方や考え方を養う。」という文字が躍るが
つまりは、こういう子どもを育てるということなのだろう。

こういう子どもは、
ドリル学習や指導方法の法則だけでは育たない。
教育という営みは、
今したことがすぐに結果にでることをねらいとするのでもない。

こんな瞬間に、
こんな姿に、
間近で触れて教育ということを真に学ぶことができるのは、
担任の特権と言えるかも知れない。