別世界(1)

一万尺の別世界で過ごす2日間。
出発前の教室には、
まぶしいばかりの朝日が差し込んでいた。

早朝から、
一人、また一人と
大きなリュックを担いだみんなが集まってくる。
席についた一人一人の顔には、
不安という文字が
見えたような気がした。

定刻になる。
黒板に書く。
「感動、友情、そして自信」

それは、
立山登山に向かうみんなへの
担任からのささやかなエール
のつもりだった。

一万尺の別世界で過ごした2日間は、
その言葉ではとても覆い尽くせないものとなる。

(つづく)