伝説の青いバット

先日の体育のティーボールの試合中に、
A君の青いバットが折れた。
バッターはB君だった。
会場は一瞬騒然としたが、
B君は予期せぬできごとに涙が溢れ、あやまり、
A君は「いいよ、いいよ」と温かくそれを受け入れた。
それが数日前のこと。

担任は、そのことについて
なんとかしなければと思ってはいたが、
具体的にどうしたらよいかと、
この2日間考えあぐねていた。

思い切って今日、話題に挙げた。
その45分の場は、担任にとって
おそらく忘れられないものとなるような気がしている。

=最初は、その状況や心情の理解へと向かった=
わざとじゃなかったと思う。
だれのせいでもないんだよ。
それだけB君には力があったんだ。
それに、その時、確か黄団は負けていた。だから余計に力が入ったんだ。
そうだ、黄団のために犠牲になってくれたんだ。

=すると、次の発言からA君やA君のバットへと視点が向いた=
でも、それだけじゃない。
A君の青バットはみんなに人気のバットだったよね。
それだけ何回も何回もティーにぶつかってきたはず。
そのダメージが重なっていたところにB君が当てただけじゃないかな。
(そういえばぼくのバットにも傷がある。。。)
(あっ、ここに亀裂がある。。。)
(と、教室のバットを引っぱり出して点検しはじめる)
そうか、A君の青バットが5ヶ月で折れたのはかわいそうだけど、
5ヶ月ももっただけでもすごいことなのかも。
A君の青バットは働きすぎだったんだよ。

=ここから、自分たちの生き様と重なって行く=
A君の青バットは自分の役目を果たせたんだ。悔いはないよ。
役に立てば立つほど体がすりへっていくって、まるで人間みたい。。。
しまっておいて使われないより打って折れた方がバットにとっては幸せだよ。
もう、休ませてあげたい。。。
おばあちゃんが言っていた。おじいちゃんはいつも畑に出て、学校の先生もしていて
忙しくて、休ませてあげたいけど、おじいちゃんはうれしそうだったって。

=すると、今度はみんなが前向きに歩み出そうとしていく=
ね、折れた青バット、地面に埋めてあげようよ。
みんなのためにがんばってくれたのだから。
どうにかしてリサイクルできないかな。
無理だよ、一度折れたものは弱くなってるから。
写真に撮って飾っておいたらどうかな。
それがいい。そして来年の終わりにクラスのアルバムを作って、そこに載せるの。
よし、バットに一人一人のコメントを書こうよ。
シールに書いて貼るという方法はどう?
まだある。。。。

みんなのアイデアは尽きなかった。
最後に、担任はA君とB君に今の気持ちを確かめた。

B君は、いろんな思いがこみ上げ、また目が真っ赤になった。
一言も声にならなかったが、思いはわかった。

A君は、「青バットに『今までありがとう』と言いたい」と言った。
そして、「B君、元気出してよ」とつぶやいた。

その二人を見た仲間が、こう言った。
「そうだよ、B君が悲しそうにしていると、A君だって悲しいと思うよ」
「大切なことを青バットは教えてくれたと思う」
担任はなぜだか目頭が熱くなった。

=授業後=
まだ気持ちが高ぶっている子たちは
教卓にどっと集まってきた。
そして、”青バットの今後のプランについて
あれこれと語っていった。

野球が大好きなある男の子は、自らこんなことを提案してくれた。
「みんながバットの芯に上手に当てられるように
 ぼくのバットにスポンジを巻いてマークをつけてくるよ。」

また、ある女の子は、こんなことを告白した。
「先生、実は前に、給食を食べていて
 突然箸が折れたことがあって。。。
 それは自分のせいだとずっと思ってた。。。
 だけど、今日のみんなの話を聞いて、
 そういうことだったのかもしれないなって思えて、
 ちょっと気持ちが楽になった感じがして、
 うれしかった。。。」