Sense of Wonder(vol.30)

先日いただいた、とても大きな寄せ書き。
寄せてくれた主たちは、まだ小さなboys & girls.
そこに書かれていた、かわいらしい文字たち。

南極でもかぜをひかないでね。
実験をいっぱいしてきてください。
ペンギンはいつ生まれるの?
南極のお仕事、がんばってください。
氷で滑らないでね。
南極での楽しい話、待ってます。
オーロラ、見てきて下さい。
南極でも面白い先生でいてください。

そして、中央にはひときわ大きく
Sense of Wonder.… 続きを読む...

何のために教員が南極へ行くのか(vol.29)

何のために教員が南極へ行くのか。
そのことをまず、
vol.1に書くべきだったのかもしれない。

その一つの答えが、
このゲートをくぐった先にあったように思えてならない。

この写真は、つい先ほど、
私の手元に届けられたもののうちのワンショット。
それらに映っていたのは、
いつかここでも紹介した地元の高校の
文化祭の時の様子だった。(vol.8)
このクラスでは、テーマとして、
なんと「南極・北極」を選んだ。
画像の中の教室ブースの様子から、
手作りの模型や熱心に調べ尽くした資料や
迫真の演技の劇や自作の実験器具などが
それぞれ力強いメッセージを発しているのがよくわかった。

写真の中のこのゲートをくぐった先にあったもの。
それは、
未知なるものに興味を抱き、
未開なものを開拓することを楽しむ、
そんな若者たちが、
polar regionの神秘と美しさを感じ取っていた姿だったのだ。

何のために教員が南極に行くのか。
その一つの答えがここにあったと思っている。”… 続きを読む...

5003(vol.28)

「しらせ」には、5003という数字が刻まれている。
「砕氷艦AGB−5003しらせ」である。

5003があるのなら、
5002や5001もあるのかな、と誰もが思うだろう。
ご存じの通り、
現在の「しらせ」は、2代目の「しらせ」である。

さかのぼると、
5003が現在の「砕氷艦しらせ」
5002が初代の「砕氷艦しらせ」
5001が「砕氷艦ふじ」の順。
ここまで海上自衛隊。
それ以前は、「巡視船PL-107巡視船そうや」が君臨するが
これは海上保安庁。
第1次観測隊は、この宗谷で南極に向かった。

私たちはよく親しみを込めて「南極観測船しらせ」と呼ぶが、
正式には「砕氷艦しらせ」というらしい。

「しらせ」は東京晴海埠頭を出港し南極大陸を目指すが、
観測隊員はオーストラリアのフリーマントルから乗艦する。
2000年までは、観測隊員は晴海埠頭から同行したが、
2001年からは、空路オーストラリアへ向かい、
フリーマントルから乗艦するようになった。

いずれにしても、
オーストラリア・パース、フリーマントルでは、
毎年、「しらせ」を歓迎してくれているという。
パース日本人学校に3年間勤務したある友人によると、
当地には「しらせのうた」なるものがあるという。
「南極の海には〜♪ 南極の海には〜♪」
ぜひ、現地で聞いて、覚えたい。”… 続きを読む...

睡眠(vol.27)

これは船室のベッド。
ブルーのストライプが
いかにもそれらしい。

2段ベッドで
こちらは上段の写真。
下段にも
ほぼ同じものがある。

さて、ここで問題。

南極までの往復で
隊員たちが
このベッドで寝るのは何泊でしょう。
ちなみに、隊員たちは
往路は、オーストラリアから「しらせ」に乗船し、
復路も、オーストラリアで「しらせ」から下船する。
つまり、オーストラリアから南極までの往復で
およそ何泊かを考えていただきたい。

あくまでも予定だが
往復でおよそ54泊。
南極とはなんと遠いところかと思う。

いや、遠さだけならこんなに時間はかかるまい。
時間がかかるのは、むしろ、
氷山を避けて慎重に進んだり、
氷を割るために一度勢いをつけに戻ったりしながら
南極を目指すためだろう。

南極とはなんと厳しいところかと思う。

しかし、我らが「しらせ」は
世界でも有数の砕氷能力をもっている。
もちろん乗組員の方々も一流だ。
大きな信頼のもと、このベッドでゆっくりと54回眠りたい。”… 続きを読む...

引き出し(vol.26)

今日もしらせは
ひたすら南下中。
http://www.nipr.ac.jp/jare/shirase/index.html

これからお世話になる船室が
やがて生活感を帯びてくる前に
今一度、よく観察しておきたい。

今回は机の引き出し。

共同生活の中で、
「自分のお城」と言えるものがあるとしたら
おそらくこのスペースだろう。

ここで
本を読んだり、パソコンを開たり、
音楽を聴いたり、日記を書いたり、
計画を立てたり、反省をしたり、
写真を整理したり、絵を描いたり、
考え事をしたり、独り言をつぶやいたり、
食べたり???
眠ったり???

とりあえず、机のいすにすわってみた。
ふと前を見ると、
たくさんの引き出しがあることに驚かされる。
意味もなく、
ひとつひとつ引き出しては、
また元にもどしてみたりする。

まだ空っぽのままの引き出したち。。。

ここをいっぱいにするほどの収穫を
もって帰ることができるか。

そんな思いにかられそうになったとき
隊長がよく言うこんなフレーズが頭に浮かぶ。

「自然の前では、がんばりすぎない」

こんな心境に、真に到達するには
経験も教養も度量も何もかもが足りない。
だからせめて、
このたくさんの引き出したちの一つは、
ずっと空のままにしておくくらいの
アソビをもっていようと思う。
“… 続きを読む...

搭載ヘリ(vol.25)

しらせの格納庫には、
この型の自衛隊ヘリが1機搭載されている。
実はこのヘリの輸送能力が
南極観測には欠かせないのだ。

このヘリは大型で、
その輸送量もさることながら、
航続距離が長いという点が大きな魅力。

本来であれば
これを2機積んでいるはずなのだが、
今回の隊では
ここには1機の姿しかなかった。
定期点検と修繕のために
兼ねてからドック入りしていたのだが、
しらせの出航までには
どうやら間に合わなかったらしい。

しかし、心強い味方も待っている。
次の寄港地オーストラリアでは、
2機のヘリをここに載せることになっている。
写真の型よりも小型ではあるが、
我々の観測を支援してくれる存在になるに違いない。
そこでヘリのパイロットさんたちとも合流し、
54次隊全員集合完了となる。”… 続きを読む...

しらせの航跡(vol.24)

2012年11月13日
北緯26度24分 東経137度31分

これは、現在のしらせの位置。
たくさんの物資と
たくさんの思いを乗せ、
南極を目指している。

思えば2日前、
晴海埠頭ではこんな光景があった。

ゆっくりと岸を離れるしらせに、
万感の思いを込めて手を振る家族。
いっさい表情をかえることもなく、
どこまでも凛として立つ乗組員。
あの日、初めて訪れた南観センターで、
フェンス越しに見ていたコンテナ。
南極まで続く空
南極まで続く海。

こういうのを目の当たりにしてしまうと、
思わず、第1次観測隊が出航したときの映像を
もう一度取り出してきて見てしまったりする。

そういう映像に触れているうちに、
思わず、白瀬中尉が南極探検を決行した当時の写真を
しみじみと眺めてしまったりする。

しらせの現在位置をチェックしていたせいか、
思わず、その航跡を
日本が南極を目指してきたちょうど100年分の歴史と重ねてしまったりする。”… 続きを読む...

船室(vol.23)

これからお世話になる
しらせの船室である。

この部屋は標準タイプの部屋のようだが、
この他、いくつかのタイプがあるという。

ただ、おそらく、
どの部屋も同じだと思われる
納得の仕様もある。

まず、
左手に見える引き出し類はすべてストッパー付き。
しかも、
両手でノブを引っ張らないと開かない仕組み。

また、
中央のいすは360°回転するが、
いすの足は床に固定済み。

さらに、
右手のソファの上部に取り付けられた白い器は、
ゴミ箱だろうか。

その他、
不要なでっぱりや段差も排除されている。

そう、
どの部屋も同様の仕様というのは、
どんなに船が揺れても
家具が飛び散らないための仕様のこと。

いつか、どこかの博物館で見た
宇宙船の船内の配慮と
どことなく似ている気がした。”… 続きを読む...

しらせ出港式(vol.22)

本日11月11日、
南極観測船「しらせ」が
晴海埠頭を出港した。

停泊中のしらせの甲板では、
定刻通り
盛大なセレモニーが
厳粛に行われた。
そのときのご挨拶の
これらの言葉と
周囲の方々の表情が
心に残る。

過去数十年に渡り「ふじ」「先代しらせ」が南極地域観測協力として輸送業務を担当してきたこと、
これまでその働きと成果は多くの賞賛と絶大な信頼を得てきたこと、
前年の観測協力においては厳しい自然状況にはばまれ計画変更を余儀なくされたこと、
今回の観測協力においても数知れない困難が立ちはだかるものと想像されること、
しかし、
現在も海外という日本とは異なる勤務環境の中で成果を挙げている仲間たちがいること、
「しらせ」もまた極地という過酷な中でこれまで培った知識と技能を発揮してほしいこと、
艦長のもとで全員が一致団結して任務を全うすることを期待すること、
最後に、
長期間の航海に際し、全員が元気な姿で帰国することを願っていること。

その間、
見送りに来たその家族、親戚、友人らの表情からは、
重要な任務つくことの誇りと、
厳しい状況下に向かうことの不安と、
数ヶ月間にわたって離れることの寂しさと、
残された者たちで頑張っていこうとする決意と、
そんな、複雑な思いが去来していたことがわかった。

我が国の南極観測が積み重ねてきた多くの歴史は、
それぞれの隊の
それぞれの隊員の
それぞれの関係者の
あらゆる思いの積み重ねでもある。”… 続きを読む...

第54次南極観測隊および乗組員壮行会(vol.21)

昨日11月9日(金)
南極観測隊員およびしらせ乗組員の壮行会が
盛大に行われた。

場所は都内のとある記念館。
部屋は「富士の間」。
(砕氷艦「ふじ」にちなんでか。。。)
(「しらせの間」ってのはやっぱないか。。。)
などと他の隊員と話しながら入館。
入館すると、
隊員や乗組員のご家族、お子様たちもたくさん集まっていた。

来賓には、
文部科学大臣や防衛省関係者、前自民党総裁、国会議員、各国大使館関係者等のご臨席を賜る。
南極観測が国家事業であり、
それが、
地球の未来、世界の平和に寄与することを
改めて自覚するに至る。

壮行会を催していただいた南極観測隊は、
大きく4つの隊に分かれる。
1つは、隕石探査を主な目的とするセルロンダーネ隊。
1つは、氷床コア持ち帰り、天体観測拠点準備を主な目的とするドームふじ隊。
1つは、海洋観測を主な目的とする海鷹丸隊。
1つは、砕氷艦「しらせ」とともに南極をめざす本隊である。

先発隊出発まで、いよいよ派遣秒読み。
ご健闘を祈念しています。

そして明日は、「しらせ出港式」。
隊員はユニホームジャンパーとキャップをまとって
晴海埠頭から見送る予定。”… 続きを読む...

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