私たち隊員は、
ヘルメット必携である。
今年のヘルメットの色はグリーン。
今次隊のメインロゴと同じだ。
今年の南極観測隊は、
極地における研究のための機材や、
それをささえる設備や燃料、食料など
1100トンの物資を輸送する。
それらを、
しらせの乗組員の方々の力添えを得ながら、
観測隊員も総出で昭和基地へ運びこむ。
とりわけ、
建設作業には、
設営系の専門隊員の指導のもとで
各隊員たちができる作業を受け持つ。
それに備えて設営系隊員たちは、
これまでに数回の
KYK(危険予知活動)訓練を計画してくれた。
これだけ限られた状況で、
なれない作業が多いはずの昭和基地で、
着々とアンテナ群が建てられたり、
最新式のエネルギー棟ができてきたり、
廃棄物の処理などが進んだりした背景には、
設営のリーダーたちの心意気があったことは
想像に難くない。
以前、ある設営系隊員から
こんな一言を掛けられた。
「君たちにけがはさせません」
ヘルメット必携は、
私たち隊員の責任である、
そう強く印象づけられた一言となった。”… 続きを読む...
こちらは、沿岸調査用の防寒具。
vol.17の氷上用防寒具と比べると、
やや薄手。
夏の南極では、
ごくわずかだが地面が露出している場所がある。
そこでは、
主にペンギンの生息調査や、
露岩域のところどころにある湖沼の調査などがある。
この周辺の湖沼では、
1995年に風変わりな植物が発見されて話題になった。
その名も「コケ坊主」。
地面からいくつも顔を出したタケノコのようにも見え、
大きなもので高さ60cm、直径40cmにもなる。
調査の結果、それらは
コケ類、藻類、細菌類などの群生したものとわかった。
南極の湖はたいへん透き通っていて、
かなりの貧栄養。
その中でどのようにこの植物体が形成されたのかは謎。
さらに、今回の隊では、
エアロゾル関係の調査も計画されている。
この調査の仕方はとてもユニーク。
ぜひ、現地からお伝えしたいことの一つだ。
その他、
様々な調査が計画されている。
“… 続きを読む...
先日、しらせに搬入した物の一例。
こちらが、観測隊の防寒具。
上のフードは、
顔の露出部分が少なくなるようになっている。
下のズボンは、
なぜか前、後ろがなくどちらでもはけるリバーシブル?
実際に着てみると、
思いの外、軽くて動きやすい。
先日、本校の玄関でもディスプレイしたが、
その時の子どもたちの反応の、
No.1は「すご〜い」で、
No.2は「かる〜い」だった。
防寒具に限らず、
靴や手袋など、
近年の装備品の技術は
どれも向上しているらしい。
ただし、
全員打ち合わせの講義の中で聞いた
この言葉を忘れてはならないと思っている。
「装備や技術は進歩したが、
南極の自然は100年前と変わらない。
むしろ、個人の能力は後退している。」”… 続きを読む...
8月の全体打ち合わせから1ヶ月後。
9月の全体打ち合わせが行われた。
分刻みで
各部署からの連絡が伝えられ
この日も
あっという間に一日が過ぎた。
気がつくと
あたりはすっかり薄暗くなっていた。
と、そこからもう一つ
大きな仕事がまっていた。
備品の配布である。
例の倉庫には
一人一人の装備が隊員別に並べられていた。
それもそのはず。
同じ観測隊といっても
隊員は一人一人行動内容が異なるのだ。
夏隊、越冬隊、
沿岸調査、氷上調査、
設営作業、基地内作業、などなど
活動内容によって装備する物や数が少しずつ違っている。
その上、
隊員によってはいくつか重複して行う場合もあったり、
事前に調査したサイズもそれぞれだったりする。
これをとりしきっている人は
いったいいくつ頭脳をもっているのだろうかと思うくらい
複雑な作業だったに違いない。
最後は一人一人が確認して
ダッフルバッグにつめて自宅へ送る。
本来は試着をして
サイズを確認することになっていたが、
そんな時間はだれにもなかった。
「着れるかな」じゃねえよ「着るんだよ」か。。。
そんなフレーズが思わず口をついて出る。
「できるかな」じゃねえよ「やるんだよ」
と書かれた張り紙をどこかで見たせいらしい。
“… 続きを読む...