日本では、今が、最も日が長くなる夏至。
南極では、今が、最も日が短くなる冬至。
正確に言うならば、
日が短くなる、というより、
太陽がまったく昇らない。
そんな極夜と呼ばれる期間が
約1ヶ月以上も続くのが南極だ。
こんなときは、
さすがの越冬隊員たちも
気分が滅入ることだろう。
そんな気分を吹き飛ばそうと
おそらく昭和基地生活の中でもっとも盛大に行われるのが
このミッドウインター祭(MWF)だ。
このお祭りは、なにも昭和基地だけに限ったものではない。
世界各国の南極基地でも同時に行われていて、
お互いにグリーティングカードを交換するそう。
そして、その今年の日本のカードが、
昨日ご紹介したあのカードというわけだ。
MWFは前夜祭から始まり
さまざまな催しものが繰り広げられるという。
3日程度は、気象などの定常観測を除いてすべて休日日課となり、
この期間に気持ちを集中して盛り上がっているはずだ。… 続きを読む...
今からちょうど半年前の12月19日。
われわれ第54次南極観測隊は、
約1ヶ月間の南大洋航海の末に、
昭和基地に降り立った。
その日から、
第54次隊の夏オペレーションが次々と展開されていった。
予定されていた任務には、それぞれが粛々と遂行し、
予定外のできごとには、冷静な判断と指示のもと的確に行動した。
すでに昭和基地で一冬を乗り越えてきた
第53次隊の越冬隊員31名の強者たちからは
様々なノウハウと
興味深い越冬中の話をたくさん教えてもらった。
あれから半年。
現在、南極昭和基地では、
第54次隊の30名の越冬隊員たちが
真冬の南極で越冬観測を続けている。
そんな越冬隊のみなさんから、
すてきなグリーティングカードが届いた。
そう、南極は今まさに、
ミッドウインター祭なのだ!… 続きを読む...
もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの20回目。
(20)宿帳
ややセピア色になった、どこか存在感のある一冊の帳面。
ラングホブデ袋浦にある雪鳥沢観測小屋にずっと備えられてきた宿帳だ。
20年以上も前からこの宿を訪れてきた南極観測隊員たちの
ここで見た自然の様子や、その時の感動、ここに来るまでの決意などが
それぞれの筆致でいきいきと刻まれていた。
不思議なことに、そこに書いてある事実は、
まさに今自分が見ている自然の光景そのものであり、
そこから彼らが感じている感動というのもまた、
まさに今自分が味わっているものそのものだった。
ずっとかわらない自然の中に建つここ雪鳥沢観測小屋の宿帳に、
おそらくこれからもずっとかわらないであろう感動を記したあの光景。
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...
11月末に日本を発ってからは、
毎週金曜日がカレーの日と決まっていた。
あれから16回目のカレーがこれ。
そして、これが54次隊最後のカレーとなる。
毎週金曜日がカレーと決まっているのは
しらせや昭和基地での生活は、
つい曜日があいまいになってしまうから、
というのが通説であるが本当のところは定かではない。
しかし、実際、それはけっこうあたっている。
昭和基地での夏作業では
みんなは曜日に関係なく任務に当たっているからだ。
南極の夏はとても短く、
その間にやるべきミッションがひしめいているうえ、
天候が荒れれば数日は作業ができないこともあるので、
できることは進めておきたいと、みんながんばる。
週末の休日などはもとより、
約10日に1回程度にやってくる「休日日課」という日でさえ、
至る所で作業や、野外行動が実施されているのが夏の昭和基地。
それでも、毎週金曜日にカレーが出ると、
隊員たちは、気持ちだけでも「週末気分」にひたることができる。
そのことが、次への英気を養い、
安全作業につながる心の余裕を生み出してくれた。
毎週金曜日はカレーの日、その理由はやはりちゃんとある。“… 続きを読む...
もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの18回目。
(18)遠近感
地図を片手に、スカルブスネスという露岩域をひたすら歩く。
見える岩は、数億年前に形成されたという。
ほとんどが氷に覆われている南極大陸の中でも、
このような露岩がむきだしになっている数%の場所は、
地球の形成の歴史を知る上でも重要な場所。
あまりの広大さに遠近感をつかめずめまいがしそうになったり、
気の遠くなるような時間に感覚がまひしてしまいそうになったりしたあの光景。
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。“… 続きを読む...
もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの17回目。
(17)石の楽園
スカルブスネスである山のピークを目指していた私たちは、
突然、目の前に広がったこの自然のいたずらに
思わず釘付けになった。
真っ赤な岩がむきだしになって、ここだけが平に広がっている。
そして、そこに不自然に転がる大小さまざまな石、岩。
行き場を見失って迷子になってしまったようだ。
いつしかここは、石の楽園とか、石の庭園とか、
そう呼ばれるようになったこの光景
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...