もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの2回目。
(2)巣作りに励むペンギン
アデリーペンギンの巣は、小石を集めて作られていた。
直径約50~60cmの円状に、それはぎっしりと敷き詰められていた。
試しにその数を数えてみると、ある巣の場合で1460個。
くちばしに一個ずつ上手にくわえて運んでは並べていった結果だ。
すでに繁殖のタイミングを終え、
つがいになりきれなかったペンギンが、
それでもひたすら巣に小石を運んでいる姿がなんともいじらしい。
本来刻まれている「本能」のもと、誠実に生命を全うする、
そんな生き方は不器用ではないということを知ったあの日。
もしかすると、
あれは夢だったのか。。。”… 続きを読む...
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。
定着氷域を離れて大海原を航海中の今となっては、
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを不定期のシリーズとしてここに書き留めていきたい。
(1)アデリーペンギンのルッカリー
見渡す限り人っ子一人いないこの場所。
耳に聞こえるのはペンギンたちの鳴き声と風の音だけ。
そこにあったのはアデリーペンギンのルッカリー。
親子寄り添いながらじっとたたずむものたち。
身をかがめて小石をつまみせっせと巣に運んで積み上げるものたち。
氷の割れ目から海に飛び込んでは自由自在に泳ぎまわるものたち。
別のえさ場を求めて岩場の坂を一歩一歩登るものたち。
私たちの訪問を気に留めることもなく、
自分たちの時間をどこまでも穏やかに、
それでいて、ひたすら力強く過ごしている。
まさにペンギンたちの楽園とでもいうべき光景が、
目の前に突然と現れたあの日。
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...
しらせは、氷でびっしりと固まった定着氷縁を離脱した。
久しぶりに、海水面を見たという感じ。
これでラミングすることもない。
離脱の直前、ちょうど海を眺めに出た。
おそらくこういう景色はあとわずか、
もしかしたら、あと数時間かもしれない、
いや、あと数分かもしれない、
そんな気配がしていてもたってもいられなくなったからだ。
出てみると、右舷側にはかなり大きな氷山が
これまでに見たこともないくらいのところまで接近していた。
ものすごい迫力だった。
思えば、この南極で見たり、聞いたり、感じたりしたことは
いつも、ものすごい迫力で私の心に迫ってきた。
そんなことをあらためて振り返りながら、
非日常が日常だった南極と徐々に離脱していきそうになる自分。
そんな自分を、この巨大氷山は
最後の最後に食い止めてくれた。“… 続きを読む...
視程はさらに悪くなっている。
比較してみるとこんな感じ。
左が昨夜の様子、
右が今朝の様子。
奥のアンテナドームは見えなくなり、
青い建物がかろうじて見える程度になった。
こんな日は、基地の中でこうして過ごす。
それは「うどん」の手打ち(まだ仕込みの段階だが)。
調理のK隊員から指南を受けつつ、
みんなにぎやか、かつ、真剣に挑戦中。
K隊員は、これでいいのかなと思っている私たちを見つけると
「うん、それでいい」
「なんでもやってみたらいい」
と声をかけてくれるのでとても安心させられる。
だが実は、時にはさりげなく、さっと手直しをしてくれるのを私は知っている。
それがとてもさりげないから、誰にも気づかれない。
外は相変わらず猛吹雪が吹き荒れているが、
基地の中ではとてもat homeな風が吹いている。
そのコントラストが印象的だと感じつつ、
このような過ごし方は自然の猛威を知っているからこそなのだろうとも思った。
私がうどん作りに迷わず手を挙げたのは
そんな理由もひとつある。
=追記=
ただし、毎日の継続観測が重要な気象隊員や
VLBI観測を行っている地圏モニタリング
および多目的アンテナ担当隊員は
細心かつ厳重な体制のもとで今も活動を継続している。
<補足 VLBI観測とは>
Very Long Baseline Interferometry
(超 長 基線(電波)干渉法)
というひたすら電波星を追いかける観測とのこと。
その他、通信担当隊員や、機械設備保守担当隊員なども
常時、目を見張ってくれていることを
付け加えておく。念のため。”… 続きを読む...
今朝からにわかに風が強まってきた。
数日前からの昭和気象台の予報通り、
ブリザード並みの低気圧が接近してきたのだ。
午前中は、東京多摩動物公園と回線を結んでの南極授業だったが、
その頃は風が強くても、
まだなんとか外からの中継ができた。
お昼からは、
これからやってくる低気圧に向けての作業を行うとともに、
第1夏宿にいた隊員は、みんな管理棟に集合となった。
ここでブリザードをやり過ごすのだ。
夕方からは、風速が20mを超え始めた。
横なぐりの吹雪が吹き荒れ、
外の視程は数100m程度。
晴れていれば抜けるような青空のもと
真っ白な氷山が輝くここ昭和基地も
ひとたび風が吹けば
あっという間にこうなってしまう。
これが南極の自然。
これが地球のもつパワー。
“… 続きを読む...