あれは夢ではなかったのか(2)(vol.122)

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを書き留めていくシリーズの2回目。
(2)巣作りに励むペンギン

アデリーペンギンの巣は、小石を集めて作られていた。
直径約50~60cmの円状に、それはぎっしりと敷き詰められていた。
試しにその数を数えてみると、ある巣の場合で1460個。
くちばしに一個ずつ上手にくわえて運んでは並べていった結果だ。

すでに繁殖のタイミングを終え、
つがいになりきれなかったペンギンが、
それでもひたすら巣に小石を運んでいる姿がなんともいじらしい。

本来刻まれている「本能」のもと、誠実に生命を全うする、
そんな生き方は不器用ではないということを知ったあの日。

もしかすると、
あれは夢だったのか。。。”… 続きを読む...

あれは夢ではなかったのか(1)

もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。

定着氷域を離れて大海原を航海中の今となっては、
つい、そう思ってしまいそうな光景がいくつかある。
それらを不定期のシリーズとしてここに書き留めていきたい。
(1)アデリーペンギンのルッカリー

見渡す限り人っ子一人いないこの場所。
耳に聞こえるのはペンギンたちの鳴き声と風の音だけ。
そこにあったのはアデリーペンギンのルッカリー。

親子寄り添いながらじっとたたずむものたち。
身をかがめて小石をつまみせっせと巣に運んで積み上げるものたち。
氷の割れ目から海に飛び込んでは自由自在に泳ぎまわるものたち。
別のえさ場を求めて岩場の坂を一歩一歩登るものたち。

私たちの訪問を気に留めることもなく、
自分たちの時間をどこまでも穏やかに、
それでいて、ひたすら力強く過ごしている。

まさにペンギンたちの楽園とでもいうべき光景が、
目の前に突然と現れたあの日。
もしかすると、
あれは夢ではなかったのか。。。”… 続きを読む...

こんな日は(vol.114)

昨夜からの強風と降雪は
とどまることを知らないようだ。

視程はさらに悪くなっている。
比較してみるとこんな感じ。
左が昨夜の様子、
右が今朝の様子。
奥のアンテナドームは見えなくなり、
青い建物がかろうじて見える程度になった。

こんな日は、基地の中でこうして過ごす。
それは「うどん」の手打ち(まだ仕込みの段階だが)。
調理のK隊員から指南を受けつつ、
みんなにぎやか、かつ、真剣に挑戦中。
K隊員は、これでいいのかなと思っている私たちを見つけると
「うん、それでいい」
「なんでもやってみたらいい」
と声をかけてくれるのでとても安心させられる。
だが実は、時にはさりげなく、さっと手直しをしてくれるのを私は知っている。
それがとてもさりげないから、誰にも気づかれない。

外は相変わらず猛吹雪が吹き荒れているが、
基地の中ではとてもat homeな風が吹いている。
そのコントラストが印象的だと感じつつ、
このような過ごし方は自然の猛威を知っているからこそなのだろうとも思った。
私がうどん作りに迷わず手を挙げたのは
そんな理由もひとつある。

=追記=
ただし、毎日の継続観測が重要な気象隊員や
VLBI観測を行っている地圏モニタリング
および多目的アンテナ担当隊員は
細心かつ厳重な体制のもとで今も活動を継続している。
<補足 VLBI観測とは>
Very Long Baseline Interferometry
(超 長 基線(電波)干渉法)
というひたすら電波星を追いかける観測とのこと。

その他、通信担当隊員や、機械設備保守担当隊員なども
常時、目を見張ってくれていることを
付け加えておく。念のため。”… 続きを読む...

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